夢ニッキ

ユメみた猫の話

怪異に包まれた学校の夢の話

小学校で給食を食べていた。


献立はカレー・蒸したジャガイモ・
ハヤシライス・ポテトサラダと
物凄く偏りのある献立だった。

芋率が70%を超える給食を食べた後、
私以外のクラスメイトは
全員校庭に遊びに行った。

誰もいない教室の隅っこで
ぼんやり体育座りをして宙を眺めていた。
ハッと気がつくとなんだか
周りの様子がおかしい気がした。

異様に静かだった。

さっきまでボールを蹴る音や鬼ごっこではしゃぐ
子供の声が散々聞こえていたのに、
下校後のようにシンとした空間になっていた。

何かがおかしい。と動こうとした時、
空がたちまち夜に変化した。

唐突に真っ暗になった教室に驚き
固まっていると、教室の窓の隅から
異界の姿が顔を表した。

オレンジ色に光る鬼火を携えながら
巨大な車輪が男の顔がついた
輪入道という妖怪が
ゆっくりと教室の外を横切って行った。

私は無意識に息を止め
できる限り身を小さく潜め
そいつの姿が視界から消えるのを待った。

学校の怪談さながら、
学校が怪異に包まれてしまったことを
嫌でも理解した。

輪入道が通った後、学校はまた昼間に戻った。
昼間に戻ったが人の気配はなく、外は明るいのに
学校の中はやたら暗く全てが黒い影に見えた。

とりあえず…とトイレに行き水を流したら
水の色が紫色だった。

トイレのドアをゆっくり開けながら
視界を下に落とすと、赤い靴が見えた。
物凄く焦った。花子さん?それとも
トイレまで追いかけてくる怪異?と慌てた。

が、これは私の友達だった。
みんながいない。教室が静かでおかしい。と
人を探していたらしい。

自分以外の人間がいることにホッとしながらも
なぜか怪異のことは言えずにいた。
信じてもらえるかわからなかったし、
むやみに怖がらせるのもどうかなと思った。

とりあえず教室に戻ろうと即足し、
出来るだけ静かに、物音を立てずじっとしてて。
と友達に指示を出した。

1時間ほどであっという間に夜が来た。
その途端、静寂が破られた。
隣のクラス、上の階のクラス、学校中
誰かのしゃべる声でいっぱいになった。

隣のクラスの声に耳をすませると
出席を取っているようだった。

「この問い分かる人…鈴木、山田、佐藤…西川…
おいなんで誰も答えないんだ。」

「この問い分かる人…鈴木、山田、佐藤…西川…
おいなんで誰も答えないんだ。」

「この問い分かる人…鈴木、山田、佐藤…西川…
おいなんで誰も答えないんだ…」

先生らしき声が永遠に、
永遠に同じ言葉を繰り返していた。
無機質で生きた人の声ではない。
ぞっとした。

多分隣のクラスに人は誰もいない。
直感でそう思った。

流石にもう隠しきれまいと、
不安な顔の友達に
ここは違う世界だと思うこと、
輪入道を見たことを話した。

その上で教室の窓を閉めようと提案した。
私たちはなるべく静かに、音を立てないよう
教室の窓を全て閉めた。

そして教室の隅っこにまたうずくまり
息をひそめた。

しばらくすると、狐のようなタヌキのような妖怪が
教室の窓を覗き込んだ。
窓が閉まっていることに気づき、なんと全ての窓を
外側から開けて来た。

そこから可愛らしい小さめの怪異が流れこむように
教室に入って来た。

私たちは息を完全に止め、自分は透明人間です。
置物です。と自己暗示をかける以外、
何も出来ることはなかった。

もうおしまいだ…と思った時、
私たちの後ろの教室のドアがからりと開いた。

驚いて振り返ると、和風のお嫁さんの衣装を来た
女の人が立っていた。

私たちには目もくれず、小さな怪異たちに
騒がしいから何かと思えばこんなゴミたちか。と
侮辱の言葉を京都弁で浴びせた後、

私と友達をすっと引き寄せ、
教室から廊下に引っ張り出した。

廊下には頭を下げ、座って深い礼をしているような
和服の人の列が続いていた。
(多分同じポーズをしなきゃダメだ)と思い、
私も頭を下げ、三つ指をついた。

多分、私たちを助けてくれたんだろう。そう思った。
その考えを見透かすかのように
「私らのこと人間と思います?」
とちょっぴり意地悪そうに
先ほどの女の人が質問して来た。

これはどう答えるのが正解なんだ。
と無言で考えながらも、
お辞儀の列は少しずつ前へ前へ進んで行った。

ここで目が覚めてしまったけれど
普通にめちゃくちゃ恐かったし
書きながら鳥肌がたった。

2019.05.14