夢ニッキ

ユメみた猫の話

世界の果てを越えた夢の話

気がつくと滅びかけた王国にいた。

小高い丘の上から辺りを見回すと、
城のような建築物が見えた。
私は焚き火を消して城へ向かった。

お城は紙で出来ていた。
飛び出す仕掛け絵本をもっと立体的にした感じだった。

お城の中に人がいる感覚はするが、
彼らも紙なので、何だか話しかける気分にならなかった。
なんとなく見つかってはいけないような気がした。

お城の構造は、エッシャーのだまし絵のようだった。
何処までも高くそびえ立つ世界樹があったり、
とても不思議な構造をしていた。

どうにか誰にも見つからず、
お城に侵入した方角と真反対の方角へ出れそうだった。
どうせ出て行くなら、
私はなんのためにお城に入ったのか。

お城の門を開いた先には、
果てしなく果てしなく永遠に続く海があった。
「ああ、ここが世界の果てなんだな。」と直感で理解した。
お城とは違い、そこに在るもの全てがリアルだった。

ぐるりと辺りを見渡すまでもなく、
この世界自身が朽ちかけ、
終わりを迎えていることを理解した。

大昔はきっと世界の果ての端まで続いていたであろう
真っ白な橋は途中で朽ち、海は灰色に澱み、
浜辺の珊瑚の死体すら腐り、
何十頭もの鯨が重なって死んでいた。
いくつもの重なった死体は、まるで道のようだった。

私はこの朽ちていく世界から逃げ出すことを決めた。
鯨の上歩いていけば、きっと世界の果ての端へ辿り着ける。
そう確信した。

白いパンを千切り、
水たまりに投げ入れながらここを通して欲しい。
私を守って欲しいと告げた。

視界の端に小さなドラゴンが
こちらに迫ってくるのが視えた。
しかし水たまりと契約していた為、
どうにか逃げられた。

いよいよ海に入ろうか。
という時に背後から声がした。

驚いて振り返ると、
エプロンをつけた女中のような人がいた。
とても怒っていた。
よく見ると他にも何人かいた。

違う言語なのか、
彼らの言葉が何1つ理解出来なかった。
しかし、私が世界の果てへ行くことに
激怒している事は何となく理解できた。

世界の果てへ辿り着くことは、
この世界の終わるという事。
それは怒って当たり前だ。
しかし私は、こんなとこで朽ちたくは無い。

急いで海に入り、鯨の元へ向かった。
不思議と水は冷たくはなかった。
近づけば近づくほど鯨の大きさに圧倒された。
こんなにも沢山の鯨が死んでしまったことが悲しかった。

鯨の尻尾から登り、背に立った。
視界の先は灰色の霧と灰色の海しかない。
カモメが飛んで鳴いていたのが唯一の心の拠り所だった。

とにかく走って走って、走って走って、走り続けた。
いつになったら霧が晴れる?
いつになったら世界の果ては見える?
いつになったら、、、と考えていた時、
突然視界が明るくなった。

目を見開きハッと我に返ると、
緑の生い茂る森と一本の道が広がっていた。

紙でもなく、灰色でもなく、死体は転がっておらず、
鮮やかな緑と静かな空気がそこにはあった。

戻ってこれたな。と思った瞬間、目が覚めた。

2017.10.30